千葉の電線は弛(たる)んでいる?

千葉の電柱倒壊・損傷2000本 台風15号被害、経産省試算 - 産経ニュース

2019.9.14 00:05

先月(2019年9月)の台風15号で千葉県内で2000本の電柱が倒壊・損傷しました。

 

なぜこんなに沢山の電柱が倒壊したのでしょうか?

電線に対する風荷重の評価に何らかの抜けがあると推定されます。

基準がどうなっているかというと、

電気設備に関する技術基準を定める省令

32条 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む。)は、その支持物が支持する電線等による引張荷重、風速四十メートル毎秒の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速四十メートル毎秒の風圧荷重の二分の一の風圧荷重を考慮して施設することができる。

 

有線電気通信設備令施行規則

第6条 令第六条第二項に規定する総務省令で定める風圧荷重は、次の三種とする。
一 甲種風圧荷重 次の表の上欄に掲げる風圧を受ける物の区別に従い、それぞれ同表の下欄に掲げるその物の垂直投影面の風圧が加わるものとして計算した荷重

風圧を受ける物

その物の垂直投影面の風圧

木柱又は鉄筋コンクリート

七八〇パスカル

鉄柱

円筒柱

七八〇パスカル

三角柱又はひし形柱

一、八六〇パスカル

角柱(鋼管により構成されるものに限る。)

一、四七〇パスカル

その他のもの

二、三五〇パスカル

鉄塔

鋼管により構成されたもの

一、六七〇パスカル

その他のもの

二、八四〇パスカル

電線又はちよう架用線

九八〇パスカル

腕金類又は函類

一、五七〇パスカル

以下 略

電線の垂直投影面への圧力で算出しており定常風での荷重しか評価していないように見えます。

 

電線が風により鞭打つような状態では、定常風で電線が押される荷重ではなく、高速で運動した電線が止められた時の電柱にかかる反力で評価すべきだと思います。

電線長さ:50 m

電線重さ:1.18 kg/m (8mm2-3芯高圧ケーブル、外径32mm)

瞬間風速:50 m/s(=180 km/h )

上記の場合で、もし電線がたるんでおり暴風で暴れると、最大では約60kg(≒50×1.18)の物体が時速180 km/h で衝突した時と同様の衝撃(何トンでしょうか?)が電柱頂部に発生すると考えられます。一方現状の法規制では外径32/1000m×長さ50m×風圧980Pa=1568N≒160kgf の静荷重と小さく、時速180 km/hの衝撃荷重とは桁が違うと思われます。

 

台風が頻繁に襲来する沖縄でも、これほど大規模な電柱倒壊のニュースは無いので、千葉県の電線の多くが今でも弛んでいる可能性が有ります。

 

電線のたるみに関する法規制は見つけられなかったので、もし本当に無いならば何らかの規定が必要ではないかと思います。